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フランスのロングトレイル「GR20」を征く

「ロングトレイルハイキング」
そう聞くと、有名なアメリカの3大ロングトレイルを思い浮かべる人が多いと思います。
(アメリカ3大トレイル=アパラチアン・トレイル、パシフィック・クレスト・トレイル、コンチネンタル・ディバイド・トレイル)
スペインのサンティアゴ・デ・コンポスティーラ(巡礼の道)も有名なロングトレイルですね。

日本では古くからは「四国八十八ヶ所巡礼」や「熊野古道」がありますが(いわゆる古道歩きや街道歩きはたくさんありますよね)
最近では「信越トレイル」「中央分水嶺」「塩の道」「みちのく潮風トレイル」など、島国で山岳地帯が多く、地形を活かした人気のロングトレイルが数々あります。
(日本のロングトレイルについては、日本ロングトレイル協会という団体もあり、わかりやすく紹介されています)

今回、本店スタッフの王が挑戦したのは、地中海に浮かぶ「コルシカ島(フランス)」のロングトレイル。
「GR20」は、コルシカ島の南北に繋がる山脈を辿る180kmのルートです。
GR20を歩いてきたときの感想をインタビュー形式でお届けします。ぜひご覧ください。

「日本に情報が少ないトレイルを歩きたかった。あと、私は島が好きなんです。」

――今回歩いた場所は、なんていう名前のルートですか?
フランスの地中海にある「コルシカ島」という島にあるトレイルです。
北にある街「Calenzana-カレンザナ」から、南にある街「Conca-コンカ」までのトレイルで「GR20」と呼ばれているルートです。
GR20は約180kmのルートで、「GR」はGrande Randonnée(グランド ランドネ)の略で、フランス語の直訳で「素晴らしいハイキング」という意味にあたります。
数字の20は、コルシカ島の昔の郵便番号から取られているようです。

コルシカ島GR20の手書きイラストMAP。王は画家「shibi」としても活動している。

――ロングハイクなら日本や別の国にもありますが、どうしてフランスのロングトレイルを歩こうと思ったのですか?
いくつか理由はありますが、1番の理由は「日本に情報があまりないトレイル」を歩きたかったからです。でも、全く情報が手に入らない未知の場所に行くのは怖かったので、いろいろと調べているうちにコルシカ島のGR20というルートを見つけたんです。
GR20は、海外では有名なトレイルではありながら、日本人であまり行っている人が少なく、そこに魅力を感じました。あと、私は島が好きなんです(笑)

――180kmのトレイルって、どのくらいの日数で歩けるんですか?
2週間ほどで歩く人が多いようです。私も6月6日から6月19日までの間、ちょうど2週間で歩いてきました。

スタート地点の街にはGR20の整備された看板とマーキングがある。

 

「GR20は日本の北アルプスみたいなイメージです。」

――GR20のトレイルの特徴みたいなものってありますか?
GR20のルートは、島の北から南に繋がる山を歩きます。
北と南でトレイルの雰囲気が大きく違うのが特徴です。全体的には急峻な山岳地帯で、標高が2,500mを超える高峰が連なっています。
北側のセクションでは、岩場を歩く場面が多く、クライミング的な要素もありました。それと、岩場では鎖やロープなどがほとんどありませんでした。3点支持や岩場歩きが不得意な人には怖く感じるかもしれません。
南側のセクションでは、標高が低く、北側ほどではないけど岩場もあります。あと、車でアクセスできるエリアも多くて、家族連れで歩いているグループもいました。北側と比べると、人が多く歩いているのが南側、という感じです。

北側のセクションでは険しい岩場が多い。

広大な景色の中を歩く。海外ならではのスケール。

――気候や気温などは日本と比べてどうでしたか?
歩いている時には、雨はまったく降られずに済みました。南側のセクションで、朝に起きた時、1度だけテントが濡れていたことがありました。
もしかしたら夜中に小雨が降っていたかもしれませんね。
気温は、北側のエリアでは「日本の北アルプス」のようなイメージです。岩稜帯の場所や、歩いている標高の高さも北アルプスと同じくらいです。
日差しの強さはありましたが、空気は乾燥していて、汗がすぐ乾くので不快感がありませんでした。風が強く吹くと肌寒いこともありましたね。
標高2,000m前後の宿泊地では、夜は3℃くらいまで気温が下がり、寒さを感じることもありました。
逆に、南側は気温が30℃くらいあって、とても暑かったです。さすがにジメジメする感じはありましたが、日陰に入ると涼しかったです。空気が乾燥しているからですかね?

火山活動で出来た奇岩のトレイル。

日本のアルプスを彷彿とさせるような雰囲気も。

「もっとのんびり歩きたかったなぁ。」

――現地のトレイル上での宿泊はどうしていましたか?
テントで泊まるか、小屋に泊まるか、そのどちらかですね。
私は1人用のテントを持っていきました。宿泊場所にはレンタルのテントもあります。

ー―日本と同じようにテント泊でもお金がかかると思うのですが、テント泊の金額はどのぐらいでしたか?
持ち込みのテント泊の場合、事前に予約していれば7€(ユーロ)です。もちろん、予約無しの飛び込みで申し込むこともできます。その場合は12€でしたね。
(2022年8月現在、1€=136円。7€=952円、12€=1,632円)
他の宿泊方法の金額は、予約して貸テントで泊まる場合は18€、2人で泊まったら25€、予約なしで小屋に泊まる場合は15€がかかります。
予約していった方がお得なのでオススメしたい方法なんですけど、予約して宿泊地を決めておくと1日の行動時間や距離も制限されてしまうので、そういった融通の効かせられないスケジュールになってしまいますよね。
私はもっとのんびり歩きたかったなぁ、と今は思っています。

とあるテント場では馬が放牧されている。これがコルシカ島の当たり前の風景。

――食糧計画はどうしていましたか?
私は、メインの食糧としてクスクスを15日分、味を変えられるように用意していきました。他には、オートミールを10日分の量を持っていきました。
クスクスは飽きないように自分で調合したカレーパウダーと、昆布出汁・ゴマ・海苔・塩を持っていきました。
オートミールにはココアパウダー、ココナッツチップス、カカオニブ、ドライフルーツをその時の好みに合わせてミックスして食べていました。
あとは、現地のスーパーマケットでパンとチーズを買ったりしていました。

――思っていたよりも充実した食糧ですね
行動食には、ドライフルーツやナッツなどを使って、自作のトレイルバーにして持っていきました。あとは現地で買ったトマトを行動食にしたり、夜ご飯に食べたりもしていました。
日本食も恋しくなりそうな気がしていたので尾西のアルファ米「赤飯」とカモシカオリジナル「YAMAMESHI」も持っていきました。けど、意外と恋しくならなかったですね(笑)

ビザノヴァという街。街らしい施設は電車の駅とBarしかない小さな街。

同じくビザノヴァ。食糧品は隣接するキャンプ場とBarで調達ができる。

 

「おなじ美しい景色を共有している仲間意識」

――他のハイカーとコミュニケーションを取ることはありましたか?
そうですね。やっぱり、みんな同じルートを歩くので、だんだん仲間意識みたいな雰囲気が出てくるんですよね。
北側のセクションでは、だいたい同じようなペースで歩き始めるのでお互いに挨拶したり、泊まる小屋が同じだったりするので顔も覚えてきますね。
南側のセクションまで進むと、歩くペースの違いから徐々にバラバラになっていきました。

犬を連れて歩いているハイカーもいた。

――お友達なんかもできたり?
唯一、それぞれ単独で歩いていた女性2人と仲良くなりました。
その女性たちは「日本は素晴らしい国だ」と褒めてくれて、とても親切にしてくれました。日本に帰国してからも連絡を取っているんですよ。

――なんだか良いですね。旅ならではの楽しみ方というか。
2週間という歩く時間のなかで、たくさんの人と顔を合わせたりしました。その中で、同じ美しい景色を共有している仲間意識みたいなものを私は感じていました。

 

「今日はどんな景色が待っているかな?」

――GR20を歩いている間、楽しかったことはなにがありましたか?
「今日はどんな景色が待っているかな?」っていうワクワクした気持ちが毎日ありました。
早朝に出発して、朝日があがる瞬間なんか、とくに最高の景色で美しかったです。山・海・空気、全てが澄んでいて、いろいろ満たされましたね。

コルシカ島の朝焼け。今日はどんな1日になるか楽しみだった。

夜は満点の星空。天の川が綺麗に見れた。

――逆に、辛かったことはありますか?
トイレ問題ですね(笑)
ある小屋では、2つあるトイレのうちの1つが、鍵が壊れていたことがあったんです。
早く出発したい日に限って、先に入っている人がなかなか出てきてくれなくて(笑)結局、鍵が壊れていた方を使ったんですけどね。
みんな、トイレの鍵が壊れていることは知っているので、いきなり開けられるようなことはなく、本当によかったです(笑)
他の小屋では、トイレのホースが壊れていて、トイレを流すのにテクニックがいるんですよ。
そのことを、仲良くなった1人に話すと、
「そんなのはブッシュ(藪の中)でやった方が早い!」と言っていました(笑)
でも、トイレもシャワーもきれいに使われているので、汚いということはなかったです。

 

「岩も草も太陽に照らされて生き生きしていた」

――最後に、GR20の全体的な感想をお願いします
とにかく景色が素晴らしかったです!
ハードな岩山があったり、のどかな原野がどこまで続いていたり、歩いていて飽きることがありませんでした。天気もずっと良かったので、岩も草も太陽に照らされて生き生きしていました。

――また行きたいですか?
もちろん!行きたいです!
「Lac de Nino(Nino湖)」という湖が素晴らしく、車でアクセスして1泊すれば行けるところなので、家族を誘って一緒に行くのも良いな、と思いました。

コルシカ島の最高峰「チント山」(2,706m)

今度は家族と再訪したいニノ湖

 

絵画展『Shibi・Trekking Log』開催

――王さんは画家としても活動されているんですよね。
そうなんです。「shibi」というアーティスト名で活動していて、主に自分で歩いて出会った山の風景などを描いています。
2020年に始まった「雲ノ平山荘アーティスト・イン・レジデンス・プログラム」にも参加したり、自然の中からたくさんの刺激を貰っています。
――展示会は初めての試みですか?
shibiとしての活動のなかでの展示会は、2022年4月に開催された雲ノ平山荘アーティスト・イン・レジデンスプログラムの展示会「Diffusion of Nature「自然」をめぐる視点」で展示したのが初めてでした。たくさんの方に見ていただけて、とても良い展示会になりました。
ついにカモシカスポーツで開催できることになり、どんな展示会になるか、いまから楽しみですね。今回歩いた「GR20」のイラストも展示予定です!
――たくさんの方に見てもらいたいですね
はい!ぜひご来場ください!私も在廊を予定していますので一緒におしゃべりしましょう!

GR20のハイク中にもイラストを描いていた

様々な出会いや風景が物語性を持って私のなかで残り、作品につながっていきます。」

開催店舗・期間
松本店開催:2022年9月28日(水)- 10月10日(月) ※入場料無料
横浜店開催:2022年10月14日(水)- 11月20日(月) ※入場料無料
イベント告知ページ「
絵画展『Shibi・Trekking Log』 開催(松本店・横浜店)

Shibi(シビ) プロフィール

1983年 上海に生まれ、生後8ヶ月で日本へ。
2006年 グラフィックデザイナーとして働く。
退職後、ワーキングホリデーや、バックパッカーとして旅をする海外での経験から、多くの刺激を受けてきた。
30代で登山に出会い、自然の中でのアクティビティに力を入れるようになる。
2019年 カモシカスポーツスタッフとして働き、現在に至る。
2020年 雲ノ平山荘 アーティスト・イン・レジデンス・プログラムに参加
2022年 Diffusion of Nature「自然」をめぐる視点 雲ノ平山荘 アーティスト・イン・レジデンス・プログラムExhibition 参加