北アルプス 滝谷ドーム中央稜・北壁・クラック尾根
2022年8月29.30日で北アルプス・滝谷でクライミングに行ってきました。
かつては”鳥も通わぬ”と形容された荒々しさ、険しさ、3000mの稜線直下でのクライミングのできる滝谷は夏のアルパインクライミングの醍醐味のある場所ではないでしょうか。
今回はクラシックルートのドーム中央稜とクラック尾根を目指しました。
アプローチは2022年6月下旬より通行可能になった白出沢ルートから穂高岳山荘を経て滝谷へと向かいました。
一般的には上高地より涸沢から入る方が多いですが時間の制限もない最短のルートとして捉えこちらを選択しました。
霧の濃い新穂高をまだ暗い中スタート,小雨もぱらつき予想よりも天気の回復が遅く不安も抱えながら蒲田林道を進みました、白出沢の出合いから登山道を登っていきます。
重太郎橋~鉱石沢間は岩場のトラバースで落石も多く、危険な場所も多くヘルメットの着用は奨励します。鎖や不安定な場所も多く、バリエーションルートを通過するような心掛けが必要な箇所ではないかと思います。
荷継沢より上部は不明瞭で浮石が非常に多いのでこちらもしっかりとルートを見極める力が必要です。
穂高岳山荘におおよそ予定通りの時間に到着し、心配していた天候も回復傾向で岩場もすっかり乾いていました。
ここから涸沢岳を経由して滝谷 ドームへの取付へと向かいます。この稜線上も大キレット並みの岩場が連続するので気は抜けません。
ようやくドームへと到着。登攀準備をし不要な荷物をデポし中央稜の取付に向かいます。
稜線から明瞭な踏み後を下り2回ほどクライムダウンを交えながらトラバースをしていくとT1と呼ばれる、懸垂下降のポイントに着きます。
ステンレスハンガーと整備されたロープにマイロンがあります。
そこから25mピッタリの懸垂をし西壁側に回り込むと大きなチムニーの下に、ここが取付となります。
威圧感のあるチムニーですが支点もカムで採っていくこともでき、滝谷の中では岩が硬く安定しています。
チムニーは外からでも内側からでも抜けることができます。
各ビレイポイントが整備されていて迷うこともありません。
途中簡単な歩きも交えて計4Pでドームの頭まで抜けることができる眺めのよい人気のルート。快適さもありとりあえず滝谷での一本にはお勧めですね。
ドーム中央稜の登攀を終えて、まだ時間も十分にあったのでそこから近いドーム北壁のルートを1本登ることにしました。
こちらのルートは2Pで登れるルートが多く、継続するにも良いかと思います。
取付きへは縦走路から岩場の基部を辿りまずが、足場が微妙なところもあったので一度懸垂をして岩場の基部に出ました。
北壁 左ルートが面白そうだったので登りました。*写真の左端のフェイスの細いクラック。
元々は人工とフリーのミックスルートだったそうです。傾斜も強く下部はそれなりの手応えありました。
こちらを2Pで再びドームの頭に抜けました。
登攀中の景色も最高です、天気も安定していて槍も時々見えました。
充実の1日を終え北穂高南稜のテン場で夜を過ごしました。
静かで景色がとても美しいテン場です。
翌日はクラック尾根へと向かいました。
アプローチは北穂小屋を超えてキレット側を100mほど下るとB沢の表記があります、こちらより浮石だらけの狭い沢を懸垂を一度交えながら下ります。
しばらく下ると左側の壁にフィックスロープが現れ、それを登り懸垂をやや右寄りに行い再び登り返すとクラック尾根の取付きへと辿りつけます。ここまで約1時間ほどでした。
クラック尾根自体は約8Pでフェース、カンテ、クラックなどの弱点を突いて登っていきます。ルート上は浮石もある箇所がありますが慎重に登れば問題のないレベルです。
ジャンケンクラックと呼ばれる核心部分は非常にすっきりとした快適なクラックで楽しいセクションでもあります。
旧メガネのコルは崩壊も激しく跡かともありません、その付近は注意が必要です。
最後のピッチを抜けると北穂小屋のすぐ脇に出るというおまけ付き登り切った感があり充実度抜群です。
背後にはこの景色気分は最高ですね。
登り終えた後は再び穂高岳山荘経由で白出沢経由で新穂高まで下山しました。
距離的にはこちらのアプローチは近いですが上高地経由より気を遣うところが多くなりますね。
今回のギアは50mハーフロープ×2,カム1セット、アルパインドロー10本程度という感じで足りました。
滝谷自体は2020年の地震や最近の雨などで崩壊が進んでしまっているところも多いようです。今後登れなくなってしまうエリアも出てくるかもしれません。
3000mの高所ということもあり天候や防寒対策は夏でも必須です、アルパインムードは抜群このエリア。クラシックルートはやはり素晴らしい。
松本店 枝中