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北アルプスオートルート 新穂高~室堂 前編(新穂高~薬師平手前)
山スキーを始めた頃から憧れていた「北アルプスのオートルート」に挑戦することができました。
山スキーを始めて2年目でトライするには厳しいルートだとは感じていましたが、天気も良さそうで、何かあっても登山で培った体力と経験でカバーできると考え、
本店スタッフ千石と一緒に4/18-4/21の日程で挑戦することにしました。
4/18(1日目) 行動タイム
新穂高(6:30)~ワサビ平小屋(8:40)~大ノマ乗越(11:50)~双六谷(12:10)~双六小屋(13:50)
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新穂高で身支度を整えいよいよ出発。新穂高からしばらくはコンクリートを歩きます。出発時の重量はスキー関係の重量抜きで18kgくらい。サーマレストのマットのリッジレストをザックの中に入れているので大きく見えますが、大きさ程の重量はありません。軽量化をしようと思えばもう少しできることはありましたが、ザックを背負って重荷での滑走を確実に行えるようになることも目的の一つだったので、安全マージンをしっかりとって、過度な軽量化はしませんでした。
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今年は雪が多いのか、穴毛谷の少し先あたりから板を履くことができました。
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ワサビ平小屋までは何度か雪が少ない区間があり、板を外して少しだけ歩いたりしましたが、ほとんどスキーで進めました。ワサビ平小屋先は積雪量も十分で進みやすくなりました。
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秩父沢あたりにくると目指すべき大ノマ乗越が見えるので、ペースも上がります。このあたりから雪が降り始めました。気温は2℃くらいで行動しているとそれほど寒くはありません。
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シール用のワックスを塗っていなかった千石のシールには雪がべったり付着。よくこれで登ってきたな…。西出はシール装着時にワックスをしっかり塗っていたので平気でした。MSRのアルパインデッシュブラシで雪を落として、ワックスを塗ってからは雪は付かなくなりました。シール用ワックス重要ですね!
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大ノマ乗越直下は傾斜が急なので、ジグを切りながら高度を上げます。
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やっと到着。休憩しながら、ガスがなくなるのを待ちます。
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少し高度を下げるとガスはなくなり、雪はザラメで快適でした。あっという間に双六谷に降り立ちます。
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ここから双六谷までは黙々と登るのみです。視界が悪く先は見渡せませんが傾斜は緩く、迷うような複雑な地形ではないので問題なし。
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途中で水を汲むこともできました。燃料と時間の節約ができ、この後のテント生活がだいぶ楽になりました。
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「あと1時間くらいで着くかな~」なんて話していたら、突然双六小屋が目の前に現れてびっくり。思ってたより進んでいたようです。2人で読図をしながら登っていたつもりでしたが、まったく読図できていませんでした。視界がないと読図は難しいですね!双六小屋で本日の行動は終了。天気が良ければ空荷で双六岳に登って滑るのもいいかなと考えていましたが、次第に風雪が強くなり吹雪みたいになってしまったので、テントでのんびりしてました。
4/19(2日目) 行動タイム
双六小屋(6:55)~三俣蓮華岳(9:00)~黒部五郎小舎(10:00)~黒部五郎岳(12:10)~ウマ沢滑走、赤木沢出合(13:15)~薬師沢小屋上平坦地2000m付近(15:15)~薬師平手前の尾根2300m付近(17:50)
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深夜には雪も止み本日は快晴。うっすらと雪が積もり、山々は真っ白で美しいです。双六小屋からの朝焼け。撮影:千石
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朝は雪面が締まっており、クトーをつけて軽快に進みます。
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双六岳には登らずトラバース気味に進みます。このあたりの斜面も滑ったら気持ちよさそうでした。
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途中で撮影スポットに到着。お互いたくさん写真を撮りました。
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三俣蓮華岳まではシールで問題なく登りました。
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三俣蓮華岳から黒部五郎小舎まで滑走です。昨夜の降雪で斜面は真っ白。クリーミーな雪質で滑りやすかったです。
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薬師岳をバックに黒部五郎小舎上部の斜面を滑る西出。今回の山行のベストショットです!撮影:千石
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黒部五郎小舎付近は無風で、半袖でも暑いくらいです。山々に囲まれていて、隔絶感もありいつ来ても良いところですね。ここで宿泊したいところですが、先は長いので出発します。
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暑いので半袖です。黒部五郎小舎からすぐ尾根に取り付き、稜線に出ました。黒部五郎岳まではシールで快適に登ります。
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登頂。滑走準備を整えます。天気は最高で雪質も良さそう♪
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私達の滑走を邪魔するものはなにもありませんでした。
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ヒャッホーです!山頂2839mから2000mの黒部川付近まで標高差800m、約2.6kmの大滑走です。最高のオープンバーンを気持ちよく滑りました。
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高度を下げると、雪も少し重くなります。足も疲れてきました。
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赤木沢と黒部川が合流地点で幸運にも雪渓が繋がっていたので、対岸に渡ります。急な雪壁を下降するので、ピッケルを使いました。今回の山行でピッケルを使ったのはここだけでした。
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ここから黒部川を見ながら簡単にトラバースできると思っていたのですが、所々崖になっていたり、急な雪壁が現れたりで何度も板を外して担ぐことになりました。
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ウマ沢の滑走が気持ち良すぎたのと、この時期の黒部川を見てみたかったので下まで滑りましたが、もう少し上の方から薬師沢に向けてトラバースを開始したほうが労力は少なく済みます。私達はこのトラバースで時間と体力を消耗してしまいました。
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赤木平が左手に見えるあたりから地形は緩やかになり、ペースも上がり薬師沢をどんどん進みます。正面へ進むと太郎平へ付きますが、明日の行程を考え薬師平に直接上がることにしました。
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薬師平へ続く尾根に上る直前で、昨日に引き続き水を汲むことができました。これで融雪時間が1時間は短縮できます。今日は行動時間が長かったのでこれには助かりました。
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水を汲んだので、重量が増えて大変ですが力を振り絞って登りました。
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テントサイトは2300m付近の斜面を整地しました。
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景色が良く、無風なので最高の宿泊になりました。この日はぐっすり眠れました。後編へ続く。
今回の山行で使用したおすすめギアを紹介します。
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おすすめギア①「シール用ワックス」写真はG3スキンワックス¥1,760(税込)。春先の水分の多い雪だとシールに雪が付着しやすくなり、雪がつくとグライド性も悪くなり体力を消耗してしまいます。シールワックスを塗ると、グライド性が良くなり、雪の付着も防げるので春先のスキーツアーでは持っていくべきだと今回実感しました。またワックスを塗る作業はシールもしっかり貼り付ける事ができるので、シールが剥がれることも予防できます。
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おすすめギア②「MSRアルパインデッシュブラシ」¥770(税込)。本来の用途は食器の汚れ落としですが、軽量コンパクトでブラシにコシがあるので、スキー板やシールに付着した雪やゴミを落とす時にも大活躍です。特に泊まりのツアーでは行動終了後にビンディング周辺に雪が付着したまま放置すると、次の日に凍りついてビンディングが正常に作動しないことがあるので要注意です。行動終了後には雪をしっかり落としておきましょう。
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おすすめギア③「ブルーアイス ハミングバード」¥28,380(税込)45cm 212g!!。ピックカバー付属。超軽量で高強度なチタンヘッドアックスです。ハミングバードよりも軽いピッケルや、頑丈なピッケルは他にもありますがこれほど軽量かつ強度があるピッケルはハミングバードしかありません。
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バックカントリーにおいてピッケルは使用する局面がくるまでのほとんどの時間、ザックの重りとなっているので、軽ければ軽いほど負担は少なく済みます。また一方でいざピッケルを使うような場面はたいてい厳しい状況なので、しっかり使える頑丈さ、信頼性も重要です。今回の山行ではピッケルは黒部川をトラバースしてる時の雪壁で1度使用しただけでした。結果からいえばピッケルはなくても山行は完遂できましたが、いざという時のためにピッケルは必要だと思います。日帰りツアーでも超軽量のハミングバードなら気兼ねなく持っていけるのでおすすめです!
後編はこちら
本店 西出